ストロークのコップ
- 藤井 浩行
- 2023年4月4日
- 読了時間: 3分
心理学の一分野に「交流分析」があります。
比較的わかりやすい考え方で、とても優れた理論だと僕は考えています。
大切な概念の一つに「ストローク」があります。
「自己または他者の存在を認める働きかけ」と定義づけられます。
ストロークは人間の成長に大きく影響を与えるもので、健全な成長を促すためには、存在を肯定的に認めるプラスのストロークが重要です。
反対の概念として、存在を値引いたり無視するような「ディスカウント」があります。
誤解を恐れずに、デフォルメして表現するとストロークは「愛」とか「愛ある働きかけ」と言えると思います。
昨今、ビジネス界で話題になっている「組織の心理的安全性」とは、❝肯定的なストローク交換が活発な場❞でもあると言うことができると思います。

一般的にストロークが十分にある人は幸福や満足感を感じ、ストロークが満たされない人は憂鬱な気分に浸っているようです。
その状態を「ストロークのコップ」で表現することがあります。
私たち一人一人が「ストロークのコップ」を持っていて、このコップがストロークで満たされていたら幸せな状態ですが、ストロークが枯渇して空きが生まれると、その空きをどうにかして埋めようとするのです。
「ストロークは心の食べ物」と言われますが、人はストロークなしでは生きられないんですね。
どのようにして空きを埋めるかというと、ストロークは「存在を認める」ことですから、他者に自分の存在を認めてもらうために、自己存在をアピールすることになります。
「一緒に遊ぼう」とコミュニケーションをとったり、抱き着いて甘えてみたりということです。
それが正当な方法であれば良いのですが、時としてそうでない場合があります。
人の関心を引くために問題行動を起こすような場合です。青少年の非行なども、その一例です。
もちろん本人は無意識に行っているので、ストロークを欲しているなどとは意識していません。
寂しいとか、人恋しいという感情は起こっているかもしれませんが。
歪んだ形でストロークを要求して一時的に関心を得ることに成功したとしても、それを継続的に満たすことはできないでしょう。
間もなく、またストロークの飢餓状態になるものと思われます。
ストロークのコップを満たすには二つの方法があります。
それは、前述のように他者からストロークをもらうということと、もう一つは自らが自分の「ストロークのコップ」を満たすということです。
僕が理想としているのは「ストロークのコップを100%自分で満たす」ことです。
何も、極度のナルシストになって、自己愛の塊になるということではありません。
誰の評価も気にすることなく、自分自身へのゆるぎない信頼を持ち、自分を大切にし、価値ある存在と認めている状態です。
これは「千万人と雖も我往かん」の心意気です。
自己肯定感と言い換えることもできるでしょう。
そして、そのような生き方ができていたら、自然と他者からのストロークも集まると思います。
ストロークのコップを自ら満たすために役立つのが、「パーソナル理念」であり「ポジティブ10」です。
自分の特長を活かし、存在理由を生きていることで「自分はOK」であることを認識することができるからです。
それが自分へのストロークとなるのです。
コップにストロークが不足しているように感じる人には、ストロークを与えてあげてください。
その力づけがパワーとなって、その人はきっと元気になるでしょう。
そして自分へのストロークが返ってくるかもしれません。
健全なストローク交換はお互いを力づけあい、これがチーム全体に広がると「心理的安全性」を形成し、チームの生産性を上げるものと思います。
もっとも身近な組織は家族です。
プラスのストロークが満ちあふれた家庭を創りたいものです。
Comments